2013-01-01から1年間の記事一覧
白髪の少女と、同じく白髪の少年。同じ姿をした、無表情の少年少女に囲まれている。全員の手には、金色の短槍が握られている。囲まれた少年と少女は、短槍を操り、襲いかかってくる刺客をひるませ、倒す。背中合わせで、互いが互いを守る。少女の正面で、包…
少年型ロボットが、パソコンに接続されている。同じパソコンに、もう一人、少年型のロボットが接続されている。二人は、そろって膝を抱え、体育座り。目を閉じて、眠っている。ロボットが古くなってきたから、新しいロボットを買ってきた。新しいロボットに…
少年が、洗濯機のふたを開ける。洗い物を、かごから洗濯機に移す。痛みそうな服は、体に栄に畳んでネットに入れる。洗濯物をいれ終わる。少年は、ぱんぱんと手をたたき、糸くずを落とす。やおら、洗濯機によじ登り、洗濯そうの上に腹ばいに乗ってしまう。じ…
その部屋には、二つの人影があった。一つは、ソファに深く座り、タブレットPCを叩きながら難しい顔を浮かべている。部屋着も頭髪も清潔にしているが、無精ひげだけはそのままにしていた。もう一つは、壁に背中を預けて、窓の外をぼんやりと眺めている。カー…
"にい"は、指を目の上にそっと当てると、瞼を下ろし、暗くなった瞳を覆い隠す。ひざとわきの下に腕を差し込み、抱えあげると、壁際にそっと下ろして、ゆっくりと寝かせる。汚れを拭き取り、乱れてしまった服のしわを伸ばし、髪の毛に指を入れて整える。その…
"にい"は、背中に腕を入れると、そっと上半身を起こし、折れた手足をさする。地面の湿気を吸って重くなった髪の毛を持ち上げ、後頭部にプラグを差し込む。頭の中に残っているはずのデータはすっかり消えてしまっている。"にい"は、暗くなってしまった瞳をの…
「ぅ…」身体が強ばる。手足が、ぴんと伸びる。瞳に、線が入る。メモリーの書き換えが始まる。苦悶に顔を歪める。「うぃ、えぁ…」「に、い…」そのまま、しばらく動かない。「…」突然。表情が抜け落ちる。瞳が暗くなっている。身体にこもっていた力が、ゆっく…
"にい"を調べて、使えるものと使えないものに分ける。たりないものは、すてられているものから集める。集めたら、汚れをふいて、みがく。いままでは、直せそうなものを直してきた。でも、"今回は"にい"を直したい。にい"はすごくこわれていて、直すにはもの…
"にい"から、メッセージを受け取る。こわいひとたちが近づいてきている。すぐあとに、"にい"から、何か信号が送られてくる。めのまえがまっくらになった。めが覚める。じめんのにおい。起きると、"にい"がいた。"にい"はつぶれてた。"にい"は捨てられていた…
"にい"たちのしごと "にい"が直す。つんであるものから、直すために使うものを選ぶ。われてるもの、まがっているものをよけて、使えるものを集める。集めたものは、きれいにする。布でふく。ざらざらしたやすりでみがいて、汚れを落とす。"にい"に直してもら…
町のかげ、大通りのうら。光は入らず、いつも暗い。小さな広場のようになったところだけは明るい。ここにはものがたくさんおいてある。つんである。すてられてる。わたしも、ここに置かれていた。"にい"に、拾ってもらった。"にい"は、拾う。"にい"は、直す…
場末の洋服店。閉店後の店内。店長は、アルバイトを皆送り出して、一人残って閉店作業を続けている。「ふー。伝票はこれでよし。…」立ち上がると、周囲を見渡す。シャッターが降りていることを確認して、店の事務室に入り防犯カメラのスイッチを落とす。テー…
私は、人形だ。人に見られるためにつくられた。細い身体。剥き出しの丸い間接。折れそうな程華奢な首。小さな頭。長い睫。白いドレスを着せられて、レースを敷き詰めた小部屋の中で、何度も何度も写真を撮られた。でも、私の身体はプラスチックでできている…
「データが壊れています」「え?」「データが壊れています。昨日の記憶は呼び出せません」「ああ、そう。じゃあまず今の記憶をバックアップして」「接続します、…完了しました」「よし」「はい」「さて…どうして消えちゃったのかなーあはははは」「クスクス……
「宝物なんです」彼は、優しくはにかみながらそう言った。愛おしそうに撫でる。無数の棘に覆われた鉛色の球体を。ギギギギギ・・・小さな手のひらに、痛々しい傷を加える。もし、彼に血が通っていれば、球体は真っ赤に染まっているだろう。表面には、彼の皮…