裏通りの"にい" [6] <干渉 その2>
"にい"は、背中に腕を入れると、そっと上半身を起こし、折れた手足をさする。地面の湿気を吸って重くなった髪の毛を持ち上げ、後頭部にプラグを差し込む。
頭の中に残っているはずのデータはすっかり消えてしまっている。
"にい"は、暗くなってしまった瞳をのぞき込むと、身体を横にして耳を上に出し、耳たぶの裏に組み込まれた無線装置をなでる。
"にい"は、広場の山の中から、金属の箱といくつかの部品を選び出し、無線機を組み立てる。
空っぽになってしまったメモリーに、テスト用のプログラムを入れる。手作りの無線機を起動して外部から信号を送信する。すると、肩が動き、肘から先の腕を宙にぶらりとぶら下げた。
この日から、"にい"たちに、無線装置を取り外す仕事が加わった。