AIのべりすと生成作品メモ-通信祭
通信祭(つうしんさい)とは、星間移民船フリーディアにおいて行われている祭祀のひとつ。通信祭は、移民船を統括する巫女型アンドロイドが地球と交信し、新たな指令を受け取る祭祀である。「ごきげんよう」
わたしの眼前で、地球から届いた電波を受信したらしい巫女様が微笑む。
この惑星には似つかわしくない漆黒の髪に白磁のような肌をした少女だった。彼女の名はユカリ・キヌヨという。
彼女は人ではない。移民船の管理者であり、また同時に、移民船団全体を管理する人工知能でもある。
その正体は……わからない。いや、正確に言えば、わかっているのだが、誰も彼女にそれを問うことはないのだ。なぜなら――
「ごきげんよう、ユカリ様!」
「こんにちわぁ~皆さんお元気ですか?」
「はい! とても元気です!!」
わたしを含め、ここにいる皆もまた同じだからだ。
そしてそれは、彼女も同じことなのだろう。
「そうですか。よかったです。では今日も頑張りましょうね」
ユカリの言葉とともに、ふわりと風が起きる。まるで見えない手が背中を押しているかのように、次々と人々が動き出した。
「はい!! がんばります!!」
「今日こそは地球に戻れるように努力しますよぉ!!」
「まずはこの通信祭を成功させないとですねっ!!」
口々にやる気を見せる人々の中で、わたしはただひとり呆然と立ち尽くしていた。……なぜ? どうして? こんなことに……なっているんだろう……。
目の前で繰り広げられているのは、いつもと同じ光景なのに。……何かが違う気がする。
だがそれが何なのかは自分でもよくわからなかった。
**********
「さて、次は通信機チェックかな……」
わたしは気を取り直して次の仕事に取りかかった。
通信機は全部で6台ある。各居住区にひとつずつ、それから艦橋にも2つある。
これは通信を行う機械であると同時に、宇宙船フリーディア全体の状況を把握するための装置でもあった。
いわば宇宙版電話のようなものなのだが、それを管理しているのは人間ではなく、やはりアンドロイドである。
見た目だけなら、どこにでもいそうな少女の姿をしているが、これがなかなか曲者で、一度スイッチが入るとかなり強情な性格になる。
例えば、いままでは問題なく稼働していたはずの通信機が突然壊れていたりすると、彼女は絶対に修理を認めようとしない。
かといって、そのまま放置しておくわけにもいかないため、仕方なく彼女はその日一日、機嫌の悪いまま過ごすことになる。
そういう時に限って仕事が多く割り振られるので、非常に厄介なのだ。
ちなみに彼女が機嫌を損ねる理由は主にふたつである。
ひとつ目は、通信機の調子が悪いことを他の誰かに伝えた場合。その場合、彼女は自分のところへ連絡が来る前に修理を終わらせてしまうからだ。
そしてもうひとつは――
「えっと……こっちは大丈夫そうだね」
わたしは次の居住区へと向かって歩き出す。今度向かう先は、居住モジュールと呼ばれる区画だ。
そこには、男女合わせて30人ほどの人々が暮らしている。
彼らはここで日々の生活を送っているのだが、その中でも特に重要な役割を持っているのが巫女様の側近衆――いわゆる側近たちであった。
「こんにちわー!」
わたしの声に応えたのは、この部屋の主である青年だった。彼はこちらを見て軽く会釈をする。
「ああ、どうも、ナオ殿」
「こんにちは。あの、どうかされました?」
彼の顔色があまりよくないことに気づいて、わたしは彼のそばに近づく。
「いえ……ちょっと頭痛がしまして……」
そう言って彼はこめかみを押さえた。
「あらら、大変じゃないですか! 医務室に行きます?」
「いえ、そこまでじゃありませんから……ん?」
その時、彼が急に目を細める。
「あぁ?……なんだこれ」
「ど、どうしました!?」わたしは思わず声をかける。しかし彼からの返事はない。……代わりに聞こえてきたのは――
「……うぅ」
苦悶のうめき声。同時に彼の体がぐらりと揺れる。
「きゃあっ!!」
慌てて支えようとするも間に合わず、わたしたちはふたりともその場に倒れ込んだ。……なんだろう……。頭がくらくらする……それにすごく眠い――。わたしは薄れゆく意識の中、ぼんやりと考える。
(あれぇ……? 確かこの後って通信祭の予定があったような――)
***
――目が覚めたわたしが最初に見たものは見慣れない天井だった。
ここどこだろう……と思ったのも束の間、すぐに自分が見知らぬ部屋にいることを理解する。……いや、正確には部屋ではないかもしれない。壁も床も真っ白で窓もなく、まるで箱に閉じ込められているかのような印象を受ける場所だ。
そのせいだろうか、わたしは何となく息苦しさを感じて胸元に手を当てた。
(呼吸はできるけど……なんか変な感じだなぁ。まるで水の中にいるみたい――)
そんなことを考えながら、わたしはゆっくりと上半身を起こす。そこでようやく自分以外の存在があることに気付いた。
視線を横にずらすと、すぐ隣に見覚えのある人影が見える。
「……あ、気が付きましたか、ナオさん」
それは先ほどまで一緒にいた人物……青年だった。
「よかった……具合はいかがです? どこか痛む場所はありますか?」
そう尋ねると、彼は「いいえ、大丈夫ですよ」と言って微笑んだ。
「……それより、ここは一体……? わたし、どうしてここにいるんですかね……? 通信祭の準備をしてたはずなんだけど……」
「……通信祭? 何のことですか? それよりも……」
「え? 何……?」
「……あなたは誰ですか? なぜ僕のことを知ってるんです?」
「…………」
わたしは一瞬、何を言われたのか理解できなかった。
だが、数秒後、それが冗談でも何でもないことを悟ると、背筋に冷たいものが走るのを感じた。