hdnprgの日記

アンドロイド、ヒューマノイドを扱った小説を、思いつき次第公開します。諸事情により、他サイトでも投稿中@hdn_prg

【小説、状態変化描写あり】思考加速用スライムヒューマノイド

私は、大きなリクライニングソファを限界まで倒すと、ゆったりと腰掛ける。

部屋の中を見回す。広くない部屋には、私が座っているソファの他に、デスクと大きな機械が設置されている。

部屋の扉が開き、誰かが入ってくる。首元に識別のためのチョーカーをはめた、人間にそっくりのヒューマノイドだ。
ヒューマノイドはとても美しい、中性的な顔を持っている。"彼女"ならば、男でも、女でも、酔わせることができるだろう。羽織っていた白いコートを脱ぐと、一糸まとわぬしなやかな身体が現れる。

彼女は、機械に接続された太いプラグを掴み、背中のアダプターに繋いでいく。コードを引きずりながら、ソファの横に立ち、膝を立てて私と目線を合わせた。
彼女が、満面の笑顔を浮かべると、ほのかに甘い香りが漂う。すっと、右手を差し出す。
「どうぞ、よろしく!」
「ああ」
私も右手を差しだし、握手を交わした。

彼女が、私が腰掛けているソファーに乗る。ソファーが、軽くきしむ。私は、ソファに座ったまま、彼女に覆い被さられる格好になった。
彼女が舌を出す。異常に長いピンクの舌を、私の舌と絡ませる。そのまま、舌の力で強くひきつけられる。視界のすべてが彼女の顔で埋められる。彼女の目は、楽しそうに輝きながらも、私をまっすぐ見つめている。

私の真上に乗った彼女の肌が、白く輝き、徐々に青く透き通っていく。彼女の顔の輪郭が崩れ、流れて、私の顔の上に垂れると、そのまま私の頭をすっぽりと包み込んでいく。身体も、スライム状に溶けた彼女の身体に覆われていく。私は、透明な彼女の中に浮かんだような状態となった。

スライムで覆われた私の口から、"味が聞こえる"。指の先から、彼女の"笑い声が見える"。感覚が交錯しして、意識がスライムの中に浮かび上がる。

「いっくよー!いい?」
足の先から、彼女の"意志が見えた"
口はスライムでいっぱいで、どうやって返答していいか分からない。とりあえず肯定の意志を"声に出そう"と意識する。すると、足の先を通じて"彼女に意志を伝える音が聞こえた"。

「よーし、とりあえず10秒だよー!」
次の瞬間、私は情報の大波に飲まれた。
皮膚から、骨から、舌から、耳から、背中から毛髪の一本一本にまで、情報がそそぎ込まれる。

10秒が数時間にも感じるほどの奔流のあと、私に再びスライムの感触が戻ってきた。
「おつかれさま!しばらく休んでねー!」
スライムが、全身をもみほぐしてくれる。そそぎ込まれた情報を租借しながら、私は、心地よさに体を任せた。