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hdnprgの日記

アンドロイド、ヒューマノイドを扱った小説を、思いつき次第公開します。諸事情により、他サイトでも投稿中@hdn_prg

【小説】マネキンの秘密

場末の洋服店。
閉店後の店内。

店長は、アルバイトを皆送り出して、一人残って閉店作業を続けている。
「ふー。伝票はこれでよし。…」
立ち上がると、周囲を見渡す。
シャッターが降りていることを確認して、店の事務室に入り防犯カメラのスイッチを落とす。テープを取り出し、新しいテープを差し込む。
しかし、彼女は防犯カメラを切ったまま、フロアに出てきた。

薄暗いフロアを確かな足取りで進み、一体の女性を象ったマネキンの前で立ち止まる。
マネキンのわき腹に手を添える。そのまま、服の上から身体の形を確かめるように手を滑らせる。マネキンの腰の後ろまで動かすと、そのままジャケットをめくり上げ、シャツ、パンツと手を差し込んでいく。マネキンの肌に直接手が触れると、腰の後ろの窪みあたりに手を添え、そっと押し込んだ。布の感触に加えて、カチっとした手応えを確認すると、そのまま押し込み続ける。
しばらくすると、彼女の手を布張りの手が包み込んだ。
彼女を、マネキンのガラスの目が見下ろしていた。
現れた手は、彼女の手首を優しく包むと、腕を撫でながら肩の後ろまで回り込む。
彼女とマネキンは、そのまましばらく抱擁を続けた。

「こんばんわ。最近会えなくてごめんね。」
「…」
マネキンは話さず、穏やかな表情を作り、彼女を見た。

「今日はね、春の新作!ねえ、この中でどれ着たい?」
「…」


「このワンピース?これならさ、これとこれを合わせて、ねぇ、可愛くない?」
「…」
にこにこしながら肯く。短く整えられた茶髪が揺れる。

「それじゃあさ、今の服脱いで!」
「…」
その場で一枚ずつ服を脱いでいき、球体間接で繋がった布張りの身体だけになっていく。


選んだ服を一枚ずつ着込み、あっという間に鮮やかな春のファッションに包まれた。

「次はポーズだね…ん、どうしたの?」
「…」
「あ、やっぱりわかる?結構働いてるからなぁ」
「…」
「うん、気をつける。また倒れちゃうようじゃ、店長失格だもんね」
「…」
「お店の模様替えも、昔は2人でやったよね。どうして、貴方が働いちゃダメなんだろうね…」
「…」

「それじゃ、ここに立って。で、ポーズはこうひねって、斜め上を向いて、そうそう…」

「うん、それでいいよ。動かないでね」
「…」
目だけが、彼女の方に向く。
「…おやすみ。またね」
腰のボタンを押すと、マネキンは動かなくなった。