hdnprgの日記

アンドロイド、ヒューマノイドを扱った小説を、思いつき次第公開します。諸事情により、他サイトでも投稿中@hdn_prg

【小説】トラップロボットの作製 (2) (着せ替え、改造)

 ロボットの汚れを落としたら、次は散髪だ。

 

大きな鏡の前に、椅子を移動させる。

ロボットを椅子に座らせ、散髪用の保護ポンチョを着せる。

俺は、ロボットが頭にかぶっている頭髪の保護ビニールを、手で取り外した。

薄いピンクの髪が、ゴムひもで束ねられている。

「目を閉じて、いいというまで開けないで」ロボットが、目を固く閉じる。

ゴムひもを外すと、髪の毛が、ぶわっと一気に広がった。

小さなロボットの頭が、くるりと丸まるくせ髪ですっぽりと包み込まれた。

 

俺は、端末を操作し、整えるヘアスタイルを表示させる。

端末を鏡の横に置き、ハサミを手に取る。

ロボットの髪の毛をざくざくと切り落としていく。

 

 2時間後、俺は仕上げ用のハサミをケースに仕舞う。

 「ふぅ。目を開けていいぞ」俺が声をかけると、ロボットが目蓋を上げる。

完成したのは、首筋がすっきり見えるショートカットだ。散髪を始めてからずっと目を閉じていたロボットは、緩くカールした毛先を、指で恐る恐る摘んでいる。青いカメラアイは、鏡の中の姿を見つめっばなしだ。

 

「どうだ?」俺は、ぼーっと観察し続けているロボットに、声をかける。

「あ、い、良いですよ。ありがとうございます」我に返ったロボットが答える。

 

俺は新しい服を取り出し、ロボットに見せる。それなりに見られる可愛い服だ。

「これを着てくれ」

「ありがとうございます」ロボットに、また笑顔が出る。俺は、ため息をこらえる。

 

服を着たロボットが、鏡の前に立つ。

 

「ゆっくり回ってみてくれ」
「はい」

ロボットは、うれしそうにはにかみながら、鏡の前で回る。俺は、これが最後だ、と自分に言い聞かせる。

出来は完璧。これなら大丈夫だろう。

「こっちに来てくれ」

ロボットを、奥の部屋に導き、椅子に座らせる。

「プログラムの様子を見る。プラグを繋ぐぞ」

丁寧に整えた髪の毛をすくい上げると、華やかな香料の匂いが広がる。

ロボットの後頭部に設置されたコネクタを出し、プラグを繋ぐ。

端末上に立ち上がったロボットの書き換えプログラムを再度確認する。準備が完了すると、俺はそっとロボットの方に視線を送る。

ロボットは、"なにやら作業をしている"俺の方をじっと見ている。俺の表情に不穏な陰が見えるのだろう。ロボットは俺に目を合わせ、真剣な表情のままそっと首を傾げた。

ピンクの前髪が、はらりとこぼれる。


俺は堪らず、端末の画面に視線を戻す。

準備したプログラムの上に、ロボットの操作コンソールを呼び出す。

俺は、ロボットの方を見ずに、

「すまんが、またベットに横になってくれないか」と命令する。

「はい」ロボットは、後頭部からケーブルを垂らしながら、素直にベットに向かった。

 

俺は、ロボットがベットに寝たことを確認すると、端末上の操作コンソールをタッチして、ロボットの意識を奪う。

ロボットは、静かに眼を閉じ、眠りについた。

 

俺は、端末にロボットの書き換えプログラムを表示させた。

ベットの方をちらりと見た後、息を止め、プログラムの実行ボタンを人差し指でタン、とタッチした。

目の前で、プログラムの進行を示すバーが伸びていった。俺は、椅子から立ち上がってベットに向かい、力無く横たわったロボットの眼を指で押し開けた。

ロボットの青いカメラアイは、焦点が合わないまま、中央部を黄色く点滅させていた。

俺は、書き換えが順調に進んでいることを確認すると、ゆっくりと息を吐いた。