【小説】ヒューマノイドを新調するとき
少年型ロボットが、パソコンに接続されている。同じパソコンに、もう一人、少年型のロボットが接続されている。
二人は、そろって膝を抱え、体育座り。目を閉じて、眠っている。
ロボットが古くなってきたから、新しいロボットを買ってきた。新しいロボットに、データをコピーしている。
古いロボットは、コピーがきちんと出来たと確認できたら、処分する予定だ。
二体のロボットと、パソコンが動く音以外は、なにも聞こえない。静かな時間。
ポロン。
パソコンから、コピー終了のアラームが鳴った。
二人に繋がったケーブルを外す。
さて、スイッチを入れてみるか。
新しいロボットの首筋に手を入れ、カチリと押し込む。
茶色の短髪がふわりと舞い上がり、かすかに木のにおいがする。ゆっくりと、長いまつげが持ち上がり、明るい緑色の瞳が覗く。
すっと、穏やかに笑みを浮かべ、
「おはようございます、マスター」
こちらも、笑顔になる。
私の名前、ここの住所、私が起きる時間や家事のことまで、一通り聞いてみる。少年型のロボットは、なめらかにすべて正しく答えた。
よし、データは大丈夫。
私の視点は、古いロボットに向かった。
膝を抱え、丸くなったままのロボット。
私は、なんとなしに近づき、髪の毛に指を入れていた。
新しいロボットが、とことこと付いてきて、のぞき込んでいる。
コチリ。
あ。
うっかり、スイッチを、入れてしまった。
数分後。
いつも見慣れた、青い瞳が、ものすごく困惑した視線を向けてくる。
新しいロボットと、古いロボット。
二人の少年に囲まれてしまった。
もう。
"古いロボットから、新しいロボットに移るだけ。"
では済まない。
新しい少年とは違う意識を持つ、馴染みの子を、殺すか、どうか。
青い瞳の少年が、おそるおそる口を開く。
「…どうするの?」
どうしよう…