読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

hdnprgの日記

アンドロイド、ヒューマノイドを扱った小説を、思いつき次第公開します。諸事情により、他サイトでも投稿中@hdn_prg

【小説】劣化「させられる」ロボット

家族がくつろぐ、リビングルーム。
その隅に、大きな布が被せられた家電がある。
十歳台前半の少年を模した、ロボットだった。

ロボットがこの家にやってきたのは、7年ほど前だった。

たくさんの洋服を買い与えられ、毎日とっかえひっかえ着せ替えられた。そして休日には、オーナーたちに連れられて頻繁に外出した。

しかし、しばらく経つと、ロボットに変化が現れた。
外装のプラスチックは染みのように醜く黄ばみ、やがてべたついてきた。髪の毛の色は、透き通るような赤色だったものが濁り、黒ずんできた。

オーナーたちは、ロボットの為に服を買わなくなった。ロボットを連れて外出することも、無くなってしまった。

ロボットは、それでも変わらずに明るい少年を演じていた。身体の外見が劣化してきても、初めて家に迎えられた時と変わらずに、どこまでも明るく振る舞っていた。

ロボットは、見た目が悪くなってしまったために、外に出ようよ、遊びに行こうよ、という願いはなかなか叶えられなかった。それでも、家事手伝いをしながら、オーナー一家にとけ込んでいた。

ロボットが迎えられてから5年目、ファームウェアアップデートの為に、ロボットはショップに一晩預けられた。
ショップから帰ってきたロボットは、一見なにも変わっていないように見えた。

しかし、1ヶ月、2ヶ月と経つと、ロボットは次第に口数が少なくなり、暗い表情を見せることが多くなった。ますます黄色く、醜くなる外装の色が、陰鬱な雰囲気に拍車をかけた。
6年目に入る頃にはオーナー一家もすっかり気が滅入ってしまい、ロボットは充電されないまま、布を掛けられて放置されるようになった。

7年目の今、ロボットの上に掛けられた布には、何冊ものカタログが重ねられている。カタログには、先日発売されたばかりのロボットたちが、きらびやかに描かれていた。


家庭用のロボットを製造する会社は今、空前の利益を上げている。
次から次へと、ロボットが売れていくからだ。

新しいロボットを売りたいのであれば、古いロボットに価値があっては困る。

外装部には安価で劣化しやすい素材を使用し、醜く変質していくに任せることにした。
それでも買い換えないのであれば、ファームウェアをいじってでも商品価値を無くす。

消費者はやがて古いロボットを見捨て、手頃で新しいロボットに手を出すことになる。


もちろん、消費者全員がこの戦略に賛同しているわけではない。ロボットに思い入れを持ち、修復して使い続ける人たちもいる。
彼らのニーズに応えるため、古いロボットを、ハードとソフトの両面から改造して再生する業者が散在している。
しかし、巨大企業に価格面で対抗できず、現状ではニッチな分野に留まっている。

しばらくは、この流れが続くだろう。
大量のロボットたちを使い捨てて。