【小説】捨てられたロボットの行く末
服をはぎ取られ、奪われる。ロボットは、雨風を凌ぐために、服の代わりにビニール袋を被って、道ばたに転がる。
建物のコンセントから電気を盗んで糊口を凌ぐ。
使える髪を、根こそぎ抜かれる。髪の毛が醜い斑になってしまう。
盗電がばれる。辛うじて逃げ出すが、無理矢理抜いたせいでコネクタが壊れ、充電できなくなってしまう。
動けるうちに、人が来ない、静かな場所を必死に探す。
階段の下、ごみの山の陰に身を潜める。直ぐに身体が上手く動かせなくなる。
薄れゆく意識。
突然明るくなる視界。衝撃。引っ張り出され、道に投げ捨てられる身体。
ぼんやりとした視界。切れ切れの意識。
身体は全く動かせない。
頭部を捕まれる感覚。植毛された肌を引きはがし、素体を露わにされる。くぼみに指をかけられ、後頭部を後ろに引き倒すと、手のひら程の大きさの球体が現れる。
ロボットの視界には多数のアラームが現れる。指一本として動かせない。つなぎを着た男は、ロボットに意識があることにすら気づいていない。
男は、ロボットの球体には興味を示さず、その横に取り付けられたチップに目を向ける。絶縁されたドライバーでチップを固定するネジをはずしていく。
ロボットの視界は、ドライバーを回すごとに揺らぎ、ついに消えた。
男は、チップを仕舞うと、後頭部を開け放ったままロボットを置き捨て、立ち去った。
雨が降る。
屋根に降った雨は、雨どいで集められて、パイプの割れ目から宙に放たれる。
その下には、ロボットの残骸があった。
頭部に流れ込んだ雨水は、本来通らないところに電気の通路を築き上げた。
ロボットは不完全な形で息を吹き返した。残ったわずかな電気が一気に流れる。
しかし、ロボットに与えられたものは、一瞬が永遠に感じるような苦痛だけだった。
背中を丸め、両腕で自分の身体を抱え込んで、最期の時をやり過ごした。
焦げ臭いにおいが辺りに漂った。直ぐに、雨で洗い流された。